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「お前は、金さえ払えば、何でも運ぶんだったよな?」 正直、御者にそんな事を言った覚えなどこれっぽちもなかったのだが、それでもコールの言うことはあながち間違いではないので、少し躊躇いがちにだが御者は首を縦に振った。「はぁ……それはまぁ御者ですから、お金さえあれば……」 ――数秒後、御者は自分が安易に頷いてしまったことにひどく後悔する事になる。 しかし、今の御者にコールが次発そうとしている〝とんでもない言葉〟など予想がつくはずもなく、御者はただコールの意図を計りかねて眉を顰めるだけで、次の瞬間、コールは一切の遠慮も無く、言い放った。「――なら、その俺の全財産、それでこの町にいる〝内宝族全員〟を適当に人目につかない安全な場所まで運んでやってくれ」「えっ……!?」「……へ?」 素っ頓狂な声をもらして未だコールのとんでもない要求が呑み込めずにいる御者の傍ら、隣の少女はあからさまに驚愕した。ロンシャン トートバッグ
第38話「魔王と勇者」
  ずうううんと、腹の底まで響いてくるような鈍い音を立て、その巨大な猿のような魔獣は崩れ落ちた。 その際僅かに地面が揺れ、砂塵が巻き上がる。石畳の地面が砕けて、音は大気を震わせる。 ――しかし、それきりだ。 凍らされ、砕け散った魔獣の頭部だったものの破片が、雪のように辺り一面に降り注いで、その一つ一つが光を反射し、輝く。 そんな中、魔獣は地に倒れ伏したまま、まるで糸が切れた人形のごとくピクリとも動かない。 血も凍るように悍ましい咆哮をあげることや、狂ったように暴れ出すことも、もうない。 すなわち、コールの完全勝利だ――「疲れた……」 コールは一言そう呟いたのち、鞘に剣をしまおうとして、しかしそれは叶わず、同じく崩れ落ちるようにその場に倒れ込んだ。 コールもまた糸が切れた人形のように両膝を地面に落として、前のめりに地べたへ倒れ伏す。 それを見て、遠目にコールの様子を見守っていた少女は、慌ててコールの下へと駆け寄った。マークバイマークジェイコブス 財布
 地面はところどころがまるで巨大なスプーンで掬ったように抉れ、茶色が剥き出しになっている。中には不自然に地中から突出している物もあった。 様々な悪臭が織り交ざって、周囲にはなんとも形容しがたい異臭が立ち込めている。 砂塵に黒煙、あらゆるものが目に映る風景を侵食していく。 そしてその中心に、二人と、一体の姿はあった。「えーと、レッドジュエルを使った宝術が3回、グリーンジュエルを使った宝術が5回、イエロージュエルを使った宝術が5回、計13回、でしたっけ?」 徐々に引いていく砂塵と黒煙の暗幕から、チャリオットに搭乗し、相変わらず不敵な笑みを浮かべるイゾルデの姿が現れた。 チャリオットの金属質なボディは巻き上がった砂塵のせいか少し汚れてはいるが、それ以上の傷らしい傷はなく、それはイゾルデも同様だ。 イゾルデは、チャリオットの搭乗席で頬杖をついて、どこか楽しげに続けた。「――で、もう終わりですかね?」フェラガモ バッグ
 ディアの頭を掴んだ方の腕を、チャリオットは左右に揺らす。 遅れてディアの体も左右に揺れ、ディアは悲痛な叫びをもらす。 しかしディアはチャリオットの拘束から逃げ出すこともできなければ、まして反撃する余力もない。ほとんど人形も同然だった。「やっぱり宝術は生身で使うとなると負担が凄まじすぎるようですね。その点ジュエル兵器は疲れを感じることもなければ技術も必要としない。我ながらいい発明をしたものです」 イゾルデは満足げに微笑みながら、さながら人形の如くディアの体を揺らす。「あー、そうだ、そこの貴方たちも逃げようとか考えちゃ駄目ですよ、じゃないとしばらくミートパイが食べられなくなっちゃいますからね?」 イゾルデは遥か後方、身を寄せ合って固まっていた6人の内宝族の少女たちへ思い出したよう言って、にっこりと微笑んだ。 その笑みの内側にある底知れない闇を垣間見、少女たちは悲鳴あげる事すらできずに体を震わせた。トートバッグ
「だっ、大丈夫ですか!?」 少女の後に続き、少女の隣で傍観していた御者もコールに駆け寄る。 少女はその華奢な腕でコールの上半身をなんとか引き起こし、抱きかかえ、一方御者はコールの体に目を凝らした。「これは……直接的なダメージではなく、無茶な宝術使用による肉体への過度な負担からくるものですね……何故こんな寿命を削るような真似を……」「はは……まだ慣れてないってことか、俺もまだまだだな……」 少女の腕の中で、コールは苦笑を浮かべる。 全身を襲う疲労感やら痛みやらを押し殺してのその表情は無理をしているのが丸分かりだ。 それでも、コールは僅かに動く顔を少女の方へと向け、やはりにっこりと微笑んで、一言だけ。「……勝った」 悪戯っぽく笑って、もう安心しろと言わんばかりに、どこまでも人間らしく宣言した。 少女はそんな彼に応えるよう、腕の中の彼に優しく微笑み返す。「ありがとう……ございます……」ヴィヴィアン財布
 心からの感謝の言葉。 余計な言葉はない。ただその一言だけに彼女の思い全てを乗せる。 それはしっかりとコールに伝わったらしく、コールはまた無邪気な子供のように屈託のない笑みを浮かべた。「……それさえ聞ければ十分だ」 そう言って、コールは上半身を起こし、少女の腕から離れる。 そしてコールは何を思ったのかおもむろに腰に提げた小さな布袋に手をかけ、そのまま力任せに紐ごと引きちぎり、今度は御者の方へ向き直って、その袋を投げ渡す。 突然の事で御者は少しだけ反応が遅れてしまうが、それでもなんとかその袋を受け取る。 布袋は受け取った際に、じゃら、と音を立てた。重量も結構なもので、恐らくは相当な量の硬貨だろうと御者は推測する。 だが、中身が分かったところでコールの意図は未だ分からず、御者はその布袋からコールへ視線を移し、訝しげに「これは?」と尋ねかけた。 すると、コールは逆に御者へ問い返してくる。マークバイマークジェイコブス 時計
 どの道、逃げたところで全員あっという間に捕まって、また楽しむように殺されてしまう。否、殺されるよりも酷い事をされる可能性だって十分にある。 自分たちは一人残らず、文字通りイゾルデの手の内で踊らされ、生殺与奪の権利を握られているのだと、改めて理解してしまう。 イゾルデはそれを知った上で不敵に口元を釣り上げ、再びディアに視線を戻した。「それにしても貴方は本当にすごい宝力ですねぇ、三種類の宝術が使えることもさながら、生身でそれほどの宝術を使えば普通は体がバラバラになってもおかしくなさそうなものですが」 イゾルデはチャリオットの腕を動かし、ディアの体を目の前まで持ってくる。「そういえば、全然関係ないですけど、私ずーーっと昔貴方に似た人と会った気がするんですが、気のせいですかね? 他人の空似ですかね?」 イゾルデは大きめの眼鏡をかけ直して、ディアの顔を見つめる。 その言葉を聞いて、ディアのイゾルデを見る目が大きく見開かれた。 イゾルデは口元をにやりと歪め、続ける。「並外れた量のジュエルを体内に宿す事で多彩な宝術を使いこなし、更には人間離れした美貌と雪のように白い頭髪を持つ魔族の少女、そんなのが昔いたんですが、もしかして貴方の名前は――」「……ッ!」 イゾルデがそこまで言いかけたところで、ディアは咄嗟にだらんと垂れた右腕を前へ押し出し、それをイゾルデに向けた。 そしてすかさず宝術発動の言葉を口にしようと口を開きかけるが、残念ながらそれは叶わなかった。 何故ならばディアがそうするよりも早く、イゾルデは懐から果物ナイフを取り出して、ディアが突き出してきた手の平にそれを突き立てたからだ。「ぃう゛っ……!」 ディアの喉まで出かけていた宝術発動の言葉が、自らの短い悲鳴で掻き消されてしまう。 突き立てられたナイフはディアの手の平から手の甲まで見事に貫通してしまっており、間もなくディアの手の線をなぞるようにして、傷口から生暖かい血液が溢れ出した。 イゾルデはニヤリと邪悪に笑い、そしてその名を口にした。「――人魔のバランサー、人呼んで〝魔王ディアメンタ・ホープ〟……その人ではないでしょうか」「ッ!?」 イゾルデが口にしたその名に驚いたのはディアではない。 遥か後方で控えていた、6人の内宝族の少女たちだった。 その反応を楽しむよう、イゾルデはそちらへ一瞥くれてやると、再びディアへ向き直った。「あれえ、図星ですかぁ? 結構あてずっぽうだったんですけどねえ?」「ひ、人違い、よ……大体、魔王は……勇者に、ころ、されたじゃない……」 ディアは右手の平に走る痛みから表情を歪めながらも、必死でそれを否定する。 イゾルデはやはり何か見透かしたように口元を釣り上げて、続けた。「はは、やっぱり間違いでしたか? いやん、イゾルデさん早とちり! でもま、せっかくですし、貴方がその魔王ディアメンタ・ホープだとして、お話しさせてもらいましょうか」 いつの間にか、先程まで恐怖に震えていた6人の内宝族たちですら、そのやりとりに視線を釘付けにされていた。 なんせ、仮に何かの間違いだったとしても、イゾルデの口から出てきたその名は、それほど重要な意味を持つものだったからだ。 イゾルデはその注目が完全に自分と、明らかに狼狽するディアへ集まったのを確認すると、すうと息を吸って、語り始めた。「――人魔のバランサー、人呼んで〝魔王ディアメンタ・ホープ〟。元々魔族と言うのは生まれつき体内にジュエルを宿しているものですが、彼女だけは別格でした。 突然変異か、それとも人為的な何かがあったのか、それは定かではありませんが、彼女が体内に宿したジュエルは種類にして64種、単純な量にして約300個以上、使える宝術は500を超える、と。 その存在は圧倒的な数の力を持つ人間たちと、脆弱な魔族たちとの間に均衡をもたらしてしまうほど強大なものだった。まさしく魔王と言う呼び名がふさわしい程に」「……」 ディアは、何も言い返さない。 イゾルデは更に続ける。「彼女のせいで人間と魔族という、本来争わざるを得ない全く別の種族が拮抗してしまい、あろうことか和解しかけてしまった時もあった。もし人間と魔族が手を結んでいたなら、それはそれは平和な国が出来上がってしまっていたかもしれませんね。 ――しかし、そうはならなかった。何の前触れも無く、どこからともなく現れた〝魔獣〟の出現によって、その薄っぺらな平和は音を立てて崩れてしまった ジュエル兵器が無かった当時です。宝術を使える魔族はともかく、魔獣に対しロクな対抗手段を持たない人間たちの被害は甚大だった。少なくとも魔族よりは。 するとあとは簡単です。一人の愚民が勝手な憶測をあたかも真実のように叫び、その雑音を聞いた別の愚民が、また叫び始める。これを何度も繰り返し、あっという間に魔族は敵という認識が愚民たちの中で根付いてしまった。 〝魔族が魔獣を操って、自分たちを襲わせている〟……こんなの少し頭が働けば違うって分かりそうなもんですけどねぇ、ま、それができないから愚民なんでしょうが、ともあれ、これが戦争の始まりです」 イゾルデはまるで指揮棒のように指を動かし、得意げに語る。「とは言っても最初は静かなものでしたね、なんせ攻撃をしかけようとしているのはあくまで人間側だけで、魔族は守りに徹していた。 一方人間側は魔王ディアメンタを恐れ、なかなか攻撃に移れない。膠着状態ってやつです。 ですが、再びその拮抗を崩す第二の存在が現われてきてしまった。そう、言うまでも無く、〝勇者ベルンハルト・ヘルティア〟です」 イゾルデが、人差し指を一本立てて見せる。「彼は、素の状態で宝術を使うことができる数少ない人間の一人で、しかも強かった。 たった一人、道中襲いくる魔獣ももろともせず、行く先々の町や村で人を助け、勇猛果敢に魔王ディアメンタの下へと進撃していったんですからね。 しかし、そんな彼でも、たった一人で魔王ディアメンタと戦った時の勝率は決して高いとは言えませんでした。彼自身大した才能も無く、あの大魔王ディアメンタに対抗できる確率はほとんど0に近かったと言われています。 でも、彼は結果として魔王を打ち倒してしまった。何故だか分かりますか?」「……」 ディアは睨みつけるような視線をイゾルデに送っているだけで、答えようとはしない。 イゾルデもそれを分かった上で、わざと勿体ぶるように間を空け、それから不気味な笑みとともにその言葉を発した。「――魔王ディアメンタ・ホープ。彼女が勇者に〝和解の申し出〟などというバカげた事さえしなければ、勇者ベルンハルトに不意を突かれて斬られることなんて、なかった」「っ!?」 6人の内宝族の少女たちが、一様に驚愕を露わにした。 そして彼女らはまた一斉にディアの方へ視線を向け、ディアの表情を覗き込む。 ディアの顔には、明らかな焦燥の色が浮かんでいた。「彼女はね、信じていたんですよ馬鹿なことに! 未だ人間と魔族が話し合いさえすれば共存していけると言う絵空事をね!」 イゾルデが嘲るように言った。 ディアは悔しさからか痛みからか顔を歪めるが、イゾルデは一向にやめる気配がない。「かくして、魔王ディアメンタは勇者ベルンハルトに討ち取られた――と思われていましたが、残念ながらそれは違いました。 大きな傷を負い、あれほど強大だった力の殆どを失いながらも生きていたんですよディアメンタ・ホープは。ベルンハルトは魔王を仕留め損ねたんです。 私から言わせればどちらも甘ちゃんですよ、だって、ベルンハルトさんには迷いがあったんですから」「ま……迷い……?」 そこで初めてディアが口を開いて、か細い声で問いかけた。 イゾルデはなんでもなさそうにその問いに答える。「ええ、彼は、初め〝魔族魔獣は例外なく倒すべき敵〟という考えで、実際それを実行していました。――ですが、ベルンハルトはそんな信念を掲げながら旅を続け、様々な人間、魔族、魔獣と接する内に気付きかけてしまった。 実は魔族は悪くないのではないか? 魔族とは自分たちとなんら変わらないのではないか? 間違っているのは自分たち人間ではないか? とね。 その迷いが彼の剣を鈍らせてしまった。それさえなければ魔王とすら互角に渡り合える実力者であったのに、最後の最後で魔王を仕留め損ねると言う大きなミスを犯してしまった。 彼女は知らないでしょうが、魔王を倒した後の彼を見たら多分笑っちゃいますよ? 目は死んだ魚みたいに濁って、それこそ幽鬼みたいに歩きながら、うわ言みたいに「もうどうでもいい」って繰り返してたんですから、あれは笑いを堪えるので必死でしたねえ」「な……なんで貴方が、勇者の事を……知って、るのよ……」 最早隠すような素振りも見せず、苛立ちやらなんやらを孕んだ声で言葉を吐き出す。 すると、またもイゾルデはなんでもなさそうに、否、わざととぼけた風に答えた。「んー? ああ、いえ簡単ですよ、魔王を倒して帰路につく途中の勇者様様を人の英知にサンプルとして勧誘しようとしたんですが、「どうでもいい」とかふざけた事ぬかしてましたので、その時偶然乗ってきていた試作型チャリオットで、ついぶっ殺しちゃいました」「なっ……!?」 ディアの顔が驚愕に染まる、イゾルデはそれを見逃さなかった。「……くっ、く、くくく……くはははははっ!! 世界で一番強い魔王ディアメンタを倒した勇者ベルンハルト! それを倒したのはあろうことか未完成のチャリオット! 世界で一番強いのは物語の中に出てくる勇者や魔王じゃない! そんなものよりずっと生臭い私たちだ!!」 イゾルデの狂ったような笑いが辺りに響き渡る。全てを蹂躙し、全てを嘲笑うような、その声が。 そしてイゾルデはひとしきり笑った後、眼鏡の奥で爛々と輝く、その猛禽類のような眼をディアへと向けた。「――さあて、お喋りもこの辺にしておきませんと、そろそろ帝国騎士団が駆けつけてくる頃ですからね。さすがに縫の改造魔獣と言えど帝国騎士団を相手どって勝つ事は難しいでしょう。それまでに貴方たちを連れて行かなければ。……とりあえず念には念を入れて脚くらいは潰しておきましょうか」 イゾルデの言葉に反応したように、チャリオットはディアの頭を掴む手とは逆の手を手刀の形にして構える。 狙いは、ディアの力なく垂れ下がった二本の脚。 これからチャリオットの行おうとしていることを理解してしまったディアは、さっと顔を青ざめさせた。「じゃ、死ぬほど痛いでしょうが、なるべく悲鳴はあげないでくださいね、五月蠅いですから――」 直後、チャリオットの構えた手刀が、凄まじい速度でディアの両膝に迫る。 ディアにそれを躱すような余力も無く、ただ次の瞬間やってくる痛みに耐えようと両目を固く結ぶ。 ――が、ディアが耐えようとしていた痛みは、やってこなかった。 何故ならば、何の前触れも無く、突如視界の外から現れた影が天高く跳躍し、チャリオットが振りかぶった方の腕を踏みつけ、それによってチャリオットの腕は軌道を変えてディアの足元スレスレを通ったから。 一方謎の影はチャリオットの腕を踏みつけた勢いで更に跳躍し、もう一方の、ディアの頭を掴んだ方の腕を、剣で斬りつけたから。 突然の事でチャリオットは思わずディアを取り落としてしまい、影は凄まじい速さでチャリオットの足元に回り込んで、落ちてきたディアを抱きかかえたから。 まさに一瞬の出来事、ディアやイゾルデ、その様子を遠くから眺めていた6人の少女たちでさえ、何が起こったのかはしばらく理解できなかった。「え……?」 ディアが、謎の影の腕の中で間の抜けた声をあげた。 自分の身に何が起こったのか理解が追いつかず、しばらく固まった後、思い出したように頭上を見上げる。 そこには、傷と埃だらけの顔でにっこりと微笑んだ、見覚えのある青年の顔があった。「――約束、守りに来たぞ」 青年、ヴァルハイト・コールは、そう言って裏表のない純粋な笑みを浮かべた。http://www.gucci.marinershomeschool.com コールはそんな二人を尻目に、よろよろとその場から立ち上がって「ほら、あれだ」と続ける。「……この町の住人なら自分たちで避難できただろうし、それにこれだけの被害だ、そろそろ帝国騎士団も駆けつけて来るだろ……どっちみち、ここに残ってたところで内宝族の犯人扱いは避けられない、だったらそれまでに全員逃げ出して、それで万々歳だ」 弱々しい声で言いながら、御者と少女の視線を背中に受け、コールは歩き出す。「ど、どこへ行くんですか……!」 少女がコールを呼び止めたのは必然だった。 言うまでも無く、今のコールは先程の魔獣との戦いで大きく消耗しており、本来立っていることすらやっとのはずなのだ。 そんな彼が自分の体に鞭を打って、どこかへ向かおうとしている。その行為が持つただならぬ悪寒に、少女は声をかけずにはいられなかった。「どこにもいかない、ちょっと約束を守りに行くだけだ……」 コールは少女の方へは振り返らずにそう言って、足元もおぼつかないまま再び歩みを再開する。ヴィヴィアン ――かと思えば、今度は唐突にコール自ら歩を止め、やはり後ろには振り返らずに少女へ問いかけてきた。「……そういえばまだ聞いてなかったな、俺の名前はヴァルハイト・コールだ、……お前は?」 なんのとっかかりもない突飛な質問に、少女は一瞬戸惑う。 しかしそれもすぐの事で、彼女はゆっくりと口を開いた。「私は……私の名前は……〝レイラ・クリソプレーズ〟です」 幼い頃奴隷として捕らえられて以来、十年以上名乗っていない、自分ですらも忘れかけていたその名を彼女は口にする。 コールはそれを聞き、まるでその名を噛みしめるようにしばらく静止した後で、一言。「……いい名前だな」 それだけを言い残し、コールは歩み出した。 今にも倒れそうになりながら、しっかりと地面を踏みしめ、少女と御者の視線だけを背中に背負って―― ■◇■◇■◇■◇■ ――酷い有様だった。 つい数刻前まで辺り一面に広がっていた緑のカーペットはもれなく焦げ、千切れ、切れ端がひらひらと宙を舞う。サルバトーレフェラガモ
 イゾルデの視線は、チャリオットの腕に当たるパーツが掴んだあるモノへと向けられていた。 チャリオットの手で頭を掴まれ、だらんと垂らした両手足を中空で揺らし、僅かに露出した肌に無数の青痣を見え隠れさせ、全身を赤黒く汚した。 まるで床一面に広がった赤い塗料を拭き取った後に残った雑巾のような彼女、ディアに。「う……ぅあぁ……」 ――度重なる宝術の行使。 最早ディアの体にはマトモに話すこともできないほど膨大な疲労が蓄積されており、うっすらと開いた瞼からくすんだ目を少しだけ覗かせ、言葉にもならない声を発するしかない。 それが虚勢なのか、それとも苦痛からくる呻きか、はたまた死への恐怖に怯えた懇願か、それすらも判別はつかない。 まぁ、いずれにせよディアを眺めながら愉快そうに微笑む彼女にとって、そんな事は全く関係なかったのだが。「はは、聞いてるじゃないですか、答えてくださいよ、名前も知らない魔族さん」マークジェイコブス 店舗
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