「中へどうぞ。」 慎也とサーリャは部屋へ入る。そこには二人の男がいた。二人とも相当偉い人なのだろうか、見た感じとても高価な衣服を着ている。部屋の奥にはその人たちのボディーガードと思われる人が待機している。「こちらにお掛けください。」 案内係はそう言うとすぐに「失礼しました」と言って退室した。二人の男はボディーガードにも退室するように指示をして、室内は慎也、サーリャと二人の男だけとなった。「で、なんのご用でしょうか？こんなFランクの冒険者なんかに。」 慎也が冷静な口調で話をきりだす。確かに、わざわざFランクの冒険者なんかを指名して依頼を頼む人なんて普通はいないだろう。しかも男二人はボディーガードまで雇えるほどの金持ちだ。Aランク冒険者でもBランク冒険者でも雇えるほどの経済力は持っているだろう。ウエストウッド
「今分かっているのは南島にあるペリル神殿。南島四代都市の一つエリエンスから山をひとつ超えたところだ。はっきり言ってこの神殿のこととか召喚術のことにはわからないことが多過ぎるのだよ。召喚の方法もよくわかってはいないし、それがどんな術式なのかもわからない。まさに手探り状態なんだ。」 男はペリル神殿があるとされている場所を指差す。ここから300キロ位行ったところだろうか。このように4つの島に散らばって存在しているとなると、かなり厄介だ。全て回るのには2年以上掛かるかもしれない。「では、次に依頼としての詳細だ。これはコンチメンタルアイランド共和国として直属の依頼となる。報酬は、まあ、終了時に渡す。依頼は掛け持ち可。そしてこの依頼に関する経費は全てこちら持ちとさせてもらう。参加メンバーなどは全て君に一任させてもらう。まあ、こんなものかな。」フェラガモ 靴
「はい、色々と心配かけたくなくて。」「まあ、いいだろう。プラッテ大陸がなにやら邪神について研究、調査を始めたという報が入ったのは約一年ほど前だ。そんなものを召喚されたらこちら側は成すすべがない。そこで竜を召喚してしまおう、そして、邪神を無力化しよう、そういう結論になったわけだ。しかし、竜の召喚には異世界から人間を召喚しなければならない。そこで我々はこの世界の『勇者』になり得る人間を神に委（ゆだ）ねて召喚した。それが君だったのだよ。」 慎也は顔を顰めた。いきなりそんなことを言われても。まだこの世界のことをよく知らない。そしてこの世界でどうにかしたい事も幾つもある。そんな世界の『勇者』になってくれと頼まれても。取りあえず幾つかの疑問点を聞いていくことにした。longchamp バッグ
「じゃあ、その召喚術ってやつにこの世界の人が触れるとどうなるんですか？」その質問に対して、男は古びた一冊に本を取り出した。「古い書物にはこう書いてある『古の召喚術に触れしもの、己が命が竜の生贄になりし』と、」正直古文が苦手な慎也にとっては全く意味がわからない。「どういう意味ですか？」と尋ねる。「要するに、その召喚術に触ったら死ぬってことですよ。」サーリャが要約してくれた。要点を掻い摘みすぎているような気もするが。「そのとおりだろう。おぬしも良い相棒を見つけたものだ。」「次の疑問点なんですけれど、その神殿っていったいどこにあるんですか？」その質問に対して男は地図を取り出した。ずいぶん用意がいいなと思う。マークバイマークジェイコブス
男は言う。慎也も半分くらいは理解できた。だが、もう半分はよく分からない。もともとこういう話が苦手だというのもあるが、一番大きな要因はこのような時に人の話を聞く能力が少し欠如しているのだ。その時、サーリャが耳元で「要は東が西に喧嘩売って、北が東に、南が西に味方したら南と西が勝って、疲れきった北はプラッテ大陸に乗っ取られたと、そのあとに東が負けを認めて長い喧嘩が終わったってことですよ。」と囁いてくれた。これでやっと８割位わかった気がする。「その後東島で戦争推進派のトップが暗殺されて東島は完全に降伏を宣言した。その後東島の復興に力が注がれていることになったんだよ。」「はぁ、で、その50年前のことがどうかしたんですか？」フェラガモ 財布
第１１話 指名依頼
慎也たちがビッグタグアを倒して早くも10日が経過した。慎也たちはその間に幾つか依頼をこなし、着実実力をつけていった。もちろん、多少の金も入手したが… 今日も依頼を受注するためギルドの受付カウンターへ行った。ギルドは今日も賑わっている。「いらっしゃいませ、こちらは受付カウンターです。ギルド登録証をお見せください。」 受付嬢のいつもの言葉だ。慎也は既に準備していたギルド登録証を提示する。今日はタグア狩りでもしようかなと思っていたら、受付嬢の顔が変わった。「片津慎也さんですね。ちょっとよろしいでしょうか？」いつもとは違う受付の対応に慎也の返事が一瞬遅れる。「こちらへどうぞ」 なんのことかと思ったが、一応ついて行くことにした。案内係に導かれながら慎也たちはギルドの奥、応接室に連れて来られた。冒険者として登録したときの部屋とは違って豪華な雰囲気だ。ヴィヴィアン時計
こんな魅力的な依頼が他にあるだろうか。経費は全て依頼主が持つ。達成できればあとはどの依頼と掛け持ってもらっても構わない。参加メンバーも自由。依頼の内容さえ違えばまさにAランク冒険者が取り合うほどの優良依頼になるのだろう。しかし、今回は内容が戦争を回避してくれというものである。しかもそのためにしなければならないこともまだわかっていない。「すいません、今日一日考えさせてもらえませんか？」 慎也もこんな重大なことを即決することは出来ない。この依頼を受ける、それはすなわちこの街を離れることになるのだ。流石に色々と整理する時間が欲しかった。「わかった。では、明日、返事を聞こう。よい返事を期待しているぞ。」 慎也とサーリャは退室し、ギルドの休憩コーナーへ向かった。そこにはソファーとテーブルが設置されていて、冒険者が自由に使うことができるようになっている。二人はそこに腰掛けた。この場所には慎也とサーリャ以外誰もいない。「慎也様、どうされますか。」サーリャが心配そうに慎也に話しかける。慎也はさっきからずっと悩んでいる様子なのだ。心配して当然だろう。しかし、慎也が悩んでいることは、依頼のことではなかった。「サーリャ…怒ってない？」「怒るって、慎也様何かされました？」「…僕がこの世界に来た経緯について秘密にしてたでしょ。それで…」「確かにその話を聞いた時は少しショックでしたよ。」「そうだよね。こんな肝心なこと秘密にしてたんだから…」確かに話すきっかけは今しかなかった訳だが、そんな肝心なことをサーリャには何も話していなかったのだ。慎也は信頼を裏切ったのも当然のことをしてしまったのだ。「いいえ、ショックだったのはそこではないんです。慎也様が悩みを相談してくれなかったことです。」「えっ、いや、だって僕はサーリャを信用してなかったって受け取られても当然のことをしたんだよ。」「いいえ、隠し事なんて誰にでもありますよ。私だってありますから。それより慎也様、今度からはちゃんと周りを頼ってくださいよ。私でよければいくらでも相談に乗りますよ。一人で抱え込むよりは絶対周りと一緒に考えたほうが答えに近づくと思いますから。」その言葉に、慎也の心の不安は一気に吹っ飛んだ。そして、今自分がするべきことがよくわかった気がした。「うん、サーリャ…ごめん…こんな肝心なこと話してなくて。」「何をおっしゃるのですか。慎也様が謝らなくてはいけないことなんて全くありませんよ。」「わかった、ありがとう、サーリャ。で、僕の考えを聞いてくれる？」「はい、もちろんです。」慎也は決心を固めた。「僕はこの依頼を受けようと思う。せっかくこんな素敵な世界に飛ばされてきたんだから、あと、アンナさんみたいな普通の人が普通に生活できるような世界の方がやっぱりいいと思うしね。」「そうですか。分かりました。で、その依頼に私もご一緒させていただいてよろしいですか？命の恩人とかそういうのは関係なくて、単に好きでついて行きたいんです。」サーリャは慎也の答えを待った。やっと自分の意思表示ができたからだ。結果はもちろん「うん、当然でしょ。これからもよろしくね。」「はい！」一応明日まで猶予をもらっているので宿に戻ってアンナたちにもこのことを伝えることにした。というか、伝えなくてはならないと思った。 宿に帰るとアンナとミリエラが昼食を食べているところだった。「どうしたんだい、今日は依頼に行ってくるんじゃなかったのかい。」いきなり帰ってきた慎也とサーリャに対して、アンナが口を開く。「すいません、ちょっと、お話しないといけないことがありまして…」「そう、じゃあ、取りあえず座って。」 いつも食事をするテーブルに座ると、慎也は今日のことを話した。自分は異世界から召喚され、ここに来たということ、戦争を止めるために竜を召喚させる依頼が来たこと、そして、自分はそれを受け、この街を発つ決意をしたことをだ。 慎也はアンナの言葉を待った。ここまでお世話になっといていきなり「依頼があるからさようなら」そんなことは避けたいと普段から思っていた、そしてこの街を拠点に活動しようかとも決めていた。そんな中のこの話である。しかも自分が思っていた2番目に最悪のシチュエーションでの別れである。しかし、アンナの答えは慎也の予想を裏切るものだった。「分かったよ。行ってらっしゃい。私たちは応援してるからね。」ミリエラも頷いた。彼女の答えもアンナの答えと同じであるということだろう。「あんた達も若いんだから、この世界をもっと見て回ってらっしゃい。私たちは別に一宿一飯の恩義なんて求めてないから。私の可愛い息子と娘の旅立ちだもの。私は笑顔で見送らせてもらうよ。」「アンナさん…」慎也は頷いた。「ちょっと待って」ミリエラ話し出す。「これだけは守ってもらわないと困るっていうのが何個かあるんだけど。」「なんですか？」とサーリャが聞く。「一つ、死なないでここに生きて再び顔を見せなさい。二つ、たまには手紙でも送ってきなさい。そして三つ目は慎也君だけになんだけれど、サーリャちゃんを大切にしなさい。これを守るって誓わないと行かせられないよ。」「ミリエラさん、ありがとうございます。」「さてと、私は料理の仕込みしないといけないから。あんた達と居られるのもあと数日ってところなんだね。旅立ちの前日には必ず言うんだよ。たんまりとご馳走作るから。」「はい、ありがとうございます。」その夜「はいぃ！？街を出てく！？」 夜の店にジンの声が響いた。ちなみに今店内に入るのはいつもの4名と客として来ているジンだけである。普段のジンからは想像することができない声に店中の人間がジンの方を振り向く。「で、それ、本当かよ。」「はい、本当です。」答えるのは慎也、サーリャは技の書を読んでいる。「で、はじめにどこに行くんだよ」「確かペリル神殿っていうところです。」「ペリル神殿？」と、ジンが首をかしげる。「すまん、聞いたことがない。」「一応エリエンスっていう街まで行ってみようと思ってますけれど。」「エリエンスか、汽車で二日ってところだな。一回行ったことがあるけれど結構遠いぞ。しかも運賃が高い。」「汽車ですか。運賃は経費として依頼主が全額出してくれるそうなんでいいんですけれど」「経費でんのか、その依頼！えらく待遇いいな。Aランク冒険者でも飛びつくぞ。」「なんか僕じゃないとダメなんですって。」「はぁ、氏名依頼ってやつか。世の中っていうのもよくわからないな。」ジンはグラスを片手に言う。「そういえば、ジンさんって何ランクなんですか？」「言ってなかったか？一応C＋だが。」「へぇ、すごいですね。」「いや、単にモンスター狩るのが楽しいだけだ。ちょっと変わった人ってことだ。」「いや、ちょっとですけどその気持ちわかりますよ。」 という慎也。たしかに、技が決まった時は爽快だし、強いモンスターを倒した時の達成感。討伐依頼というのはそういうちょっとした喜びがないとやってられない。実際、納品依頼より討伐依頼の方がもらえるポイントが高いので戦闘嫌いでCランクまでは上がれないだろう。 ジンは一枚の紙を取り出した。そしてそこに書きこみ、慎也に手渡した。「エリエンスに付いたらここに行ってみろ。昔の俺の知り合いが店やってる。『ジンの紹介で来た』って言えば割り引いてもらえるだろう。」慎也はそのメモを受け取ると、お礼を言って本に挟んだ。「ジン、あんたも明日来るんでしょ。」さっきまでいた客が使った皿を洗い終えたアンナが戻ってきた。「ああ、こいつの出発を見送りたくてな。」「へぇ、あんたもそういうところあるんだね。」「そりゃ俺も人間だ。あるに決まってんだろ。」 慎也は今日は早めに風呂に入ることにした。そして、早く寝て明日の朝こそはミリエラの奇襲を避けようしたからだ。「じゃあ、お風呂お借りしますよ。」慎也はアンナにいつもの言葉をかける。「ああ、どうぞ。」それに対してアンナが答える。 「こんないつもの光景ももう少しで見納めか。」ジンはそう呟いた。http://www.hzfoshiexpo.net「さて、本題はこれからだ。今、再びプラッテ大陸が動き出そうとしている。あの国はこの５０年でかなりの軍事力を蓄えているという情報も入ってきている。冒険者の人手不足もそれが原因だろう。特に強力な魔法を使える人間は役に立つからな。」慎也は頷いた。しかし、前に聞いたジンの見解によると戦争まではまだ時間があるということだった。なぜ、今その話をFランク冒険者にするのだろうか。今度はもう一人の男が話をはじめる。「しかし戦争が起きる前に対処する方法がある。2000年ほど前にこのような世界を巻き込んだ戦争が行われたという記述がある。その時は巨大な竜みたいなモンスターが世界を平定へ導いたらしい、で、その竜を崇めるために人々は神殿を造った。そしてその竜は死ぬときに再び戦争が起きた時にそれを沈めることができる新たな龍の召喚をできるようにその神殿の一部に何らかの召喚術を仕掛けたらしいのだよ。」Ferragamoバッグ「で、それでどうしろと言うんですか？」「その召喚術はこの世界の人間には発動できないんだよ。そこで神が召喚なされた君にその召喚術の発動を依頼したいと。そういうことだよ。」慎也は驚いた。自分が別の世界から来たということをこの男が知っていたということにだ。「なぜそのことを知っているのですか？」「何を隠そう君を呼ぶ召喚術の発動をしたのは私たちだからね。」その言葉に慎也は驚愕する。はい？召喚したのは自分たちだ？そんなこと言われても全く意味が理解できない。「それって、どういうことですか？」 サーリャが口を開ける。慎也はサーリャに自分がこの世界に来た経緯に付いては全く話していなかった。「なるほど、君は冒険者としての相方にもこのことを話していなかったのか。」ロンシャン バッグ
「まあ、その前に昔話から使用ではないか。」一人の男が話し出す。「50年ほど前に4つの島を巻き込んだ戦争があったのは知っているかい？」「すいません、全く…」アンナやジンから少しは聞いていたが、慎也はその話をちゃんと聞いたことがなかった。みんな、あまり話したさそうではなかったし、戦争の話を聞くのも気が引けるからだ。 それに対して、男は慎也が知らないのも当然だろうと思っていたのだろう。予想通りというような顔をしている。男は話を続けた。「ではそこから話そう。50年前に東島と西島の戦いが始まった。まあ、いわゆる内戦というやつだよ。東島が西島を支配し、独立を目指して攻撃を仕掛けたのだよ。北島は東島へ付き、南島は西島に付いた。もともと南島が4つの島の中で最も豊かだったというのもあって南島と西島の連合軍によって北島と東島は完全に劣勢に立った。その時にプラッテ大陸が北島へと侵略した。北島を完全に侵略したプラッテ大陸は停戦協定を持ち出した。他の3つの島はそれを飲んだ。もともと北島は寒くて不毛の地が多かったから北島は捨てたという意見や見解が多いのだが。」マークジェイコブス 時計
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